自動車の欠陥に起因する爆発炎上事故
事故の概要
本件は、Aさんが平成13年3月、法人B所有の自動車(車名:メルセデスベンツ、通称:S600L、以下「本件車両」)を運転し首都高速道路を走行していたところ、突然本件車両から出火し本件車両が半焼してしまったという事故です。
当方としては、この事故の原因は自動車の欠陥にあると考え、調査した結果、本件車両のハンドル装置部分からオイルが漏れてこれに引火した可能性が高いことが判明しました。
そこで、当方は、平成13年11月、本件車両の輸入業者ダイムラークライスラー日本株式会社(以下「ダイムラー社」)、及び、販売業者株式会社ヤナセ埼玉(以下「ヤナセ社」)に対して損害賠償を求め提訴したのです。
争点
本件訴訟における主な争点は、
① 自動車の欠陥の有無
② Aさんに対するヤナセ社の責任の有無※
③ 懲罰的損害賠償の可否※
以上3点でした。
しかし、ダイムラー社らは、本件訴訟において本件車両に欠陥があったことを否定しつつも、一定の損害賠償には応じる旨の主張をしたことから、①は本格的に争われませんでした。
※ ヤナセ社の責任
ヤナセ社から本件車両を買ったのはAさんではなくBだったため、Aさんはヤナセ社との関係で契約を結んでおらず、契約上の責任を問うことが難しかったのです。
※ 懲罰的損害賠償
通常の損害賠償は、車の修理代や入院治療費、被害者が働けなくなったため失った給料等、実際に生じた損害についてお金で賠償するというものです。これに対して、懲罰的損害賠償とは、実際に生じた損害とは別に、加害者に対する制裁として命じられる(いわば罰金のような)賠償のことで、アメリカ合衆国では制度として採用されておりますが、日本の裁判所で認められたことはありません。
判決の内容
(1)上記争点のうち②ヤナセ社の責任については、
ヤナセ社が本件車両のリコール修理を行い、出火原因となったオイル漏れ付近を修理点検していること、Aさんが専ら本件車両を使用していたこと等を理由に、ヤナセ社は販売業者及びリコールの修理点検を行った業者として、Aさんに対する契約上の責任を認めました。
(2)③懲罰的損害賠償については、
従来の判例を踏襲し、形式的に否定しただけで、ダイムラー社らの社会的責任には全く言及することはありませんでした。
(3)結果
裁判所は、Aさん及びBの請求のうち慰謝料を含む1320万円あまりの損害賠償請求を認めたに留まりました。
判決に対する評価
本判決は、Aさんが本件事故により身体的な怪我を負わなかったにもかかわらず、Aさんの精神的苦痛(慰謝料)を認めた点で、一定程度評価することができます。
しかしながら、懲罰的損害賠償については、従前の判例や裁判例を踏襲しただけで、特に明確な理由も述べずこれを否定しており、今後の課題となりました。
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