不動産法務

入会権に基づく一般廃棄物処理施設建設差止請求の可否

事案の概要

Y町が、一般廃棄物処理施設を建設しようと町内のA集落の住民Xらが入会権を有する本件土地について、A集落代表者と賃貸借契約を締結したところ、A集落の住民(の一部)であるXらが、賃貸借契約は入会地の「処分」に当たるところ、入会地の「処分」には全住民の同意が必要であると主張して主位的には入会権自体による妨害排除請求権に基づき、予備的には住民Xらの有する個別的な使用収益権による妨害排除請求権に基づき、処理施設の建設差止めを求めたという事案です。

Yは、①賃貸借契約締結は利用実態などに照らして「処分」に当たらず、全員の同意は不要である、②「処分」に当たるとしても、全員の同意があった、③「処分」に当たるとしても、A集落には多数決で「処分」が可能となる慣習があった、④A集落は権利能力なき社団であり、多数決で「処分」が可能となる規約が存在するなどと主張して争いました。

第一審の判断

原判決(鹿児島地方裁判所名瀬支部平成16年2月20日判決)は、本件土地が入会地であると認定した上で、その賃貸借は入会地の「処分」にあたり入会権者全員の同意を要するところ、全員の同意があったとは認められない、A集落の規約の文言上、多数決で「処分」が可能となる規約が成立していたとは認められないなどと判断してXらの請求を認め、処理施設の建設を禁止しました。

原判決は、Y町が、A集落において多数決によって財産が処分された実例が存在すると指摘したことについて「総会の多数決で処理されたといえるためには、総会で決議に反対した者が存在し、その者が総会後も反対の意思を有していたことが明らかであったにもかかわらず、その存在を無視して決議に従って処理がなされたと評価できることが必要である。」と判断しました。

原判決を受けて、Y町は福岡高等裁判所宮崎支部に控訴しました。当法律事務所は、この控訴審からY町の代理人となり、原判決の不当性を指摘し、その破棄とXらの請求の棄却を求めて裁判を追行しました。

第二審の判断

控訴審の福岡高等裁判所宮崎支部は平成18年4月28日判決で、入会権に基づく差止請求について「集落民全員もしくはその大多数を当事者として提起すべき」であるところ、極く一部の集落民によって訴訟提起されたもので当事者適格を欠いて不適法であるとして、住民Xらの主位的請求を却下しました。

同判決はまた、入会集落の基本財産の変更・処分を、集落総会の多数決により決定する旨の慣習があると認め、これは民法251条に反するものではないと判示した上で、A集落の基本財産の変更・処分を決定する権限を有する総会において賃貸借契約の締結が賛成多数で可決され、適法に締結されたと判示して、予備的請求についても棄却しました。

Xらは上告しましたが、最高裁はこれを棄却し、第二審の判決が確定しました。

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