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小学校廃校処分取消訴訟について
訴訟提起の経過
 Xらは,子供たちへの影響や地域への影響を検討せずに一方的に進められたA市中央地区の学区再編成に疑問を持ち,地域の中核でもあるN小学校の廃校処分に異議を唱えるべく,平成13年2月1日に宇都宮地方裁判所に原告1616名がN小学校廃校処分及びK小学校への通学校指定処分の取消訴訟を提起した。

 同訴訟は,裁判所から原告全員についての印紙貼付命令が出たため,やむなく原告団を20名に絞った上で進めることにした。そして,市側は,保護者以外の住民には,N小学校の廃校処分について争う利益(原告適格)がないことやN小学校が廃校処分にされてしまった後なので原状に戻ることはないのだから訴える利益がないことといった行政訴訟特有の訴訟要件の議論に終始したため,一向に裁判所での審理が進まなかった。

 そこでXらは,訴訟要件論のような形式論ではなく,本来審理されるべき
@子供たちの教育環境や通学環境の悪化,
AN小学校廃校を含めた学区再編成の議論に不透明な点が多いこと,
B市長をはじめとした市関係者が地域の意見を無視して進めた統廃合であることといった実質的な違法性を訴訟での争点
にするため,平成14年5月31日にA市に対する国家賠償請求訴訟を提起した。
争点
 両訴訟でXらは,
@ 新通学校に指定されたK小学校に耐震構造の問題があるなど子供たちの教育環境が悪化したこと
A 通学距離が長くなることで排気ガスを子供たちが長時間吸いながら通学せざるをえなくなり,健康面での被害が生じていることなど通学環境が悪化したこと
B 地域の中核であったN小学校を失うことでN小地域の各種活動に支障が出たこと
C 子供たちの教育環境として,希薄な人間関係となる大規模小学校よりも学年を超えた付き合いができる中小規模小学校がよいこと
D 再編成の議論が十分にされていないこと
を主張した。

 市側は,Xらの主張に対し,K小学校の環境は,受忍できる範囲であり悪化とはいえない【@AB】と主張し,子供たちの切磋琢磨できるのは大規模小学校である【C】と主張するほか,議事過程については,適法に議論されたことを議事録などの資料をもって立証することもせず,ただ問題はない【D】と主張するだけであった。

 Xらは,子供たちへの喘息などの健康被害や子供だけでなく保護者の関係も希薄となった現状の立証をしたり,千葉大学教授の意見書で教育的見地からの影響を立証したほか,議事過程については,編成委員会(市からの嘱託を受けて有識者らによって再編成の可否を市民の立場から検討するための委員会)議事録の提出を求めたり(文書提出命令申立て),編成委員会委員の陳述書を提出したり,当時の助役や市議会議長,教育長の証人尋問などを請求した。

 市側は,全て「必要なし」としたほか,編成委員会議事録は,一部の議事録を市側代理人が裁判所に提出していながら「作成していない」「存在しない」として一貫してその提出を拒否し続けた。しかし,裁判所は全て「調べる必要なし」とのことで当方の申請を全て却下した。特に編成委員会は,市側が「議事録が存在しない」として拒否し続けることに対して問題として取り上げることもせずにである。
一審判決の評価
 両訴訟については,平成17年8月10日に判決が言い渡された。判決では,@N小学校の廃校処分及びK小学校への通学校指定処分の取消訴訟については,各訴えを却下し,A損害賠償請求については,請求を棄却した。両訴訟で裁判所は,編成委員会という重要な議事機関での議事の違法性について十分な検討をしなかった。

 各判決を見ても廃校処分取消訴訟では,子供たちにはN小学校という特定の小学校で教育を受ける権利まで保障されておらず,社会生活上通学可能な小学校に通うことができるから個別の権利侵害が認められず,市・議会・市長の廃校処分は,行政処分ではないとしたほか,K小学校の通学校指定処分もこれを取り消しても元のN小学校が回復するわけではないから訴えの利益がないとして,本質論に入らず,訴訟要件の審理のみの判決であった。本質論に入らないいわゆる門前払い判決であり,司法の役割を放棄した不当判決である。

 国家賠償請求訴訟でも市側が形式的に手続(各委員会,議会の開催,地域への説明会の実施)を踏んだことだけを捉え,議事手続については審理しないまま,「手続に違法はない」とするだけで,誠に遺憾である。行政訴訟・統廃合訴訟については,平成16年6月に市民が「使いやすくなじみやすい行政訴訟」を目指し行政事件訴訟法が改正されたほか,平成17年1月に青森地方裁判所で青森県橋本小学校の廃校処分手続において,議事録が改ざんされたことを裁判所が評価して,市に損害賠償を認めた判決がでるなど行政に問題があったものについては,積極的に裁判所が救済するという一つの流れがある。しかし,本判決は,Xらの議事録の文書提出命令や各関係者の証人尋問を拒絶した上,検討もしないものであり,市による情報隠匿の姿勢を司法が容認するものといえよう。

 また,判決では,当方が主張した前記各点について
・Xらは,N小学校という特定の小学校で教育を受ける権利までは保障されていないこと
・(校舎施設の耐震構造をはじめとした教育環境の問題を取り上げることなく)K小学校が通学可能な環境距離にあることだけを捉えて,妥当な選択であること
を理由として,Xらの主張を認めなかった。この裁判所の判断は,前述の議事手続の問題を取り上げていないだけでなく,子供たちの教育環境も取り上げることなく,なされており,審理が尽くされたとは言いがたい。
控訴審について
 一審判決で判断されていない廃校処分の実質的な違法性及び議事手続の違法性についての司法判断を求めるために東京高等裁判所に控訴した。高等裁判所では,どのような判決をしても住民と市の間に紛争が残るだけで今後のためにはよくないのではないかと裁判所から和解の勧試がなされた。当方(住民側)としては,将来の子供たちにとってより良い教育環境を作ることができるならば,和解をしてもよいだろうという判断から裁判所からの勧試を受け入れ,和解を成立させた。和解では,

1)市は,今後よりよい教育環境を作るべく努力すること
2)市は伝統ある街にふさわしい公教育の在り方を研究検討すること
3)小学校施設について,地元の意向を踏まえながら有効利用を検討すること

をそれぞれ合意した。この和解内容は,当初の「小学校廃校処分の取消」という訴訟提起目的からすれば,完全ではないものの将来の子供たちの教育環境の整備を市との間で合意できた点で評価できるものといえる。この和解を通じて,合意通りに市が子供たちの教育環境をより良いものにすることを期待したい。
以上
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